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ライブイベント撮影と編集について

 MITプラザの20周年記念ライブの映像を例に、

撮影と映像編集について技術的な部分を中心に書こうと思います。


まずは、MITプラザ開館20周年となりました!

今後も気軽にご利用頂ける施設として運営させて頂きたいと思います。


今回は20周年という節目のイベントを記録目的として、

出演者様達のご協力を得てライブ撮影を行わせて頂きました。


今回ブログでは【公開した映像】と【無加工版】との比較を交えて、

今回の編集で行ったことや付随する技術情報

少し(とは言えない膨大な情報量ですが)説明したいと思います。


まずは一般公開した映像です。(画像クリックで別ウィンドウが開きます)

















こちらが収録ままの映像も音声も無調整の映像です。(このブログ限定公開)

上記一般公開版と編集点は全く同じです。(音声は各バンド前後でブツ切り状態)


















両方HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ表示)として公開しておりますが、

無加工の方はSDR(今までの映像の通常表示)のままHDR公開しております。

そのため、見比べても厳密には公正な判断にはなりません。

どれだけ印象が違うかは映像・音響ともに感じて頂けるかと思っております。

まずは交互に見て・聞いて、比べて頂ければと思います。


専門的に簡単なところだけ書くと、

無加工の方はホワイトバランス以外は各カメラも違い基本設定もズレていて

色かぶりも若干ありつつ各カメラ各色の特性の悪さや癖がかなり残っています。


HDRの説明と、YouTubeでHDR表示になっているかの確認方法


 【 HDR 】は【 黒を更に黒く、白を更に白く表現できる 】表示方法です。

 表示機器が対応していなければ今までの通常のSDRでしか表示できません。

 

 ・ YouTubeでHDRで表示出来ているかの確認方法

  パソコンの場合は右下歯車アイコンでHDR表示かを簡単に確認できます。

  iPad等の場合は歯車アイコンは右上に表示されているので、

  一回タッチするとHDR表示かどうかを確認可能です。

  (YouTube側の仕様変更で表示や操作方法が今後変わる事があります)




 




















SDR環境では黒が明るく見える場合もあると思います。

多くの環境を想定して黒が少し明るく見える意図的な調整をしております。

※HDR環境での視聴であれば通常違和感なく見えます。

様々な環境を想定して種類の違う高精度モニターで確認調整しております。



初めに今回行ったことを書きます。


・各カメラの色調合わせ、現場の雰囲気を感じられる”印象色”寄り画調調整

・SDR撮影素材をHDRに拡張した明暗調整(一般的「Rec.709」でも確認済)

・音量感の安定と最大化、左右バランスと立体感の調整、中低域の量感改善


以上が大まかな調整点となります。

それらについて細かな技術的に調整した理由と、

関連するカメラの性能や記録方式の違いについて書きます。


ふむふむと思っていただけた方は、

2つの映像を見比べるだけでも、

ある程度違いや行った処理は伝わるかもしれません。

以下は踏み込んだ技術的な話も踏まえて、

今回行った作業内容や必要性の理由を書いて行きます。




★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 





今回は私一人で複数のカメラ管理+現場音収録から編集公開まで行いました。

フォーマットはHDR・HLGで編集・公開しております。


主なターゲットは今後を見据えHDR10以降に対応したモニターとしました。

Rec.709対応の今までのテレビ等SDR表示機器でも確認し調整しております。

一部一般的基準からズレた調整の機種では暗部が変に見える場合があります。

全ての機器で狙った色味や質感再現は不可能ですのでご了承ください。


しかし、
以前の記事【 モニタースピーカー(スタジオモニター)】と同じで、
 モニター環境が最も重要なポイント となります。
ディスプレイにも”一般の綺麗に見せるための機種(テレビ等)”と
”基準の確認のために厳密な色調整を可能にする機種”があります。

モニターディスプレイのモニター目的の機種は、
【カラーマネジメントモニター】等と表記されることが多いです。
色域(色の表現域の広さ)や明るさやその再現精度が良く、
映像や写真を編集する際に間違いを少なくする為のディスプレイです。
今回も複数のモニターで調整と確認を行っております。


少し私の映像での経歴を書きます。

ブラウン管時代のTV CMやYoutube CMなど様々な映像制作をしてきました。

秋田市と東京都内でCM制作や番組のCGや舞台撮影等を行ってきました。

またフリーランスとしても大手企業や商品紹介、各大学や病院や技術紹介等、

店頭デジタルサイネージ用映像制作、地域コンペやイベント用映像などなど、

日本各地の地域や生活に係る多くの映像制作に携わってきました。

映像での本職はモーショングラフィックです。

今回の映像であればオープニングとエンディングのような部分の作業です。

今回はシンプルな処理しかしておりませんが、

文字の出方や動きはすべて1から手作業で組んでいるものです。

文字や自分で撮った写真を個別に手動で目的通りに動かしています。

このような画像やイラスト等を動かしたり加工したり特殊効果をつくる事を

「モーショーングラフィック」と言います。

基本的には撮影、編集、加工、音声加工等まですべてを行う事が多いです。



私が映像を始めた時代は映像制作はテレビ放送向けの極特殊な仕事でした。

今ではスマートフォンでも様々な事が出来るようになってきており、

実際スマホでもイメージと目的が明確であれば多くは出来てしまいます。
特殊表現もプリセットが売られていて簡単に思い描く表現を作りやすいです。
今は多くの写真や映像のSNSや動画共有サービスがありますので、
”目的に合う表現とセンスが重要な時代”だ思います。
素人とプロの違いはなくなっているので、
同じ土俵上で「どんな魅力的な事ができるか」を楽しむ時代だと感じます。

そんな認識の時代感を今持っている私の考えでは、
基礎的な知識を多く身に着けて経験を重ねることで
「更に的確な表現手段を多くの人たちに届けられる」ようになると考えます。
これは映像でも音響でもデータ化できる表現共通の事だと思っております。



それではまず、今回の撮影についての基礎情報です。


今回は1オペで作業期間もかなり短期間(編集は約2週間)で終えました。

内容が4時間オーバーで4K HDRということでサーバ負担が大きいらしく、

YouTubeアップ後の確認に約5日必要であった為、

数回の最終確認と修正で多くの時間を必要としてしまいました。


撮りこぼしや手振れが多い点はご了承ください。私の力不足です。

4Kテレビや映画向けの撮影であれば広めに撮る事が多いと思いますが、

YouTubeの視聴環境は大型テレビから小型スマホまで様々なので

全体を見せたり顔等を大きく見せるようにズームは多用しております。

また動きが粗い部分はAX60と三脚の重量バランスが合っていない事と、

使用したズームコントローラーの誤動作で急激な速度変化が原因です。

本番始まり狙えない位置があり急遽私個人のカメラも追加したため、

正面から主にドラムの方を狙ったカメラもブレ等何度か起きております。

計カメラ5台+PCMレコーダー1台での収録&編集となります。

通常業務での撮影の場合は、業務用カメラや高品質レンズを使います。

基本的にカメラ1台を一人担当でリハや多くの打ち合わせも行います。

今回は記録が目的の為、本番一発勝負での短縮形式となっております。



今回利用した機材です。


・SONY ZV-E10《 4K 映像向けAPS-Cサイズ一眼 正面上 HDR記録 》

・SONY FDR-AX60《 4K ホームビデオカメラ 右斜め前 SDR記録 》

・GoPro10《 5.3K アクションカメラ ステージ横下 SDR記録 》

・Canon ivis HF R21《 フルHD ホームビデオカメラ 左斜め前 SDR記録 》

・私物カメラ 《 4K フルサイズ一眼 正面客席 Log記録 》

・ZOOM H1n《 ステレオPCMレコーダー 中央・高さ2.5m 48kHz/24bit 》


また、

 当社のほとんどの機材は【 レンタル可能 】です。

もしご有用の際はご連絡ください(私物カメラはお貸しできません)




★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 



まずは今回の作業内容の進め方について書いておきます。


メーカーも品質も製造時期も全く違うカメラの組み合わせな為、

マルチカメラでの編集前に「 各カメラの色合わせ作業 」を行いました。

※マルチカメラ編集=複数カメラや音のタイミングを合わせて編集する事。


色合わせには有名映像編集ソフトの標準機能としてついていたり、

専用有料の追加ソフト等も存在します。

しかし、今回のように離れた別々の角度から別々の対象を映す場合、

そういったカラーマッチングソフトはほぼ役に立ちません。

理由は映っている対象に充てられた照明色が常に変化し違う為です。

こういった作業が多いためディスプレイの色域や精度が重要になります。

目での確認が必要で大切だということです。


撮影時に設定として共通させた点はホワイトバランス固定のみです。

また、今回はタイムコード同期は無視しています。

(合わせる方法はいくつかありますが今回は予算と時間の都合で不使用)

各バンドさんごと編集時に目と耳で合わせています。


業務で複数撮影の場合同期作業はとても重要な基礎作業になります。

各カメラは長時間の記録になればなるほど周波数(クロック)がずれます。

同じ記録時間なのに開始と終わりでフレームが合わない現象が起きます。

これは映像でも録音でも長時間の記録では必ず起きる現象なので、

レコーダー間の周期を合わせるために通常は同期という作業を行います。

今回のように同期せず編集する場合は使用しない部分で各素材を分割し、

補助機能を活用しつつも最終的には目と耳で合わせて行きます。


先に書いた通り、カメラでホワイトバランスは合わせてはおりますが、

加工無し映像でわかる通り各カメラの設定や色作りの個性が出ております。

そのままでは全く色や明るさが合っていない状態になるということです。


例えば左からのキャノンのビデオカメラは彩度を載せすぎていて派手です。

Cannonは以前から『印象色』といわれる、

忠実ではないけど人の目に綺麗に見える色味を武器にしてきたメーカーです。

古い機材なのでその傾向が強く出ていると思われます。編集者泣かせです。

照明の雰囲気は最も出ていますがほかのカメラと色も性能も違いすぎるので、

このままでは使えない状態だと分かると思います。


このようにマルチカメラの場合同じ機種を使わない限りは、

同じ設定値でも肌色等重要部分が合うことはほぼありません。

※同じカメラでも起きます。業務器の場合は事前に内部調整可能です。

自分の目で画と各アナライザーを見ながらの作業が基本となります。

完璧にはあってはおりませんが、かなり近く寄せられていると思います。





今回各カメラの色情報記録bit数は全て8bitとなっております。

その他の設定も細かく記録しておきます。

ZV-E10 = “HLG2” 記録データレート100Mbps (4:2:0 8bit)

AX60 = “ナチュラル” 記録データレート100Mbps (4:2:0 8bit)

GoPro = “フラット” 記録データレート60Mbps (4:2:0 8bit)

HF R21= “x.v.color” 記録データレート24Mbps MXP (4:2:0 8bit)

私物カメラ = ”Log” 記録データレート100Mbps (4:2:0 8bit)

H1n = 48kHz/24bit



白は合わせても他の色が合わない事は事前にわかっていたので、

次に編集時に色を合わせをする場合肝となるのが【 加工耐性 】です。


これは編集時の色加工に耐えられるデータ的な耐性のことですが、

・「ファイルフォーマット」(今回収録は全て耐性の低いH.264です)

・「記録データビットレート(~MBps等で表記されます)」

・「明暗差耐性=ダイナミックレンジ(白飛び&黒つぶれ)」

・「明暗差の解像度=色深度bit数

・「平面的色情報の間引きの少なさ(クロマサンプリング=4:2:0等の表記)」

以上の要素が良ければより近い色に難なく近づけられるようになります。


私物カメラは急遽だったため加工耐性の高いLog (ログ) 記録にしました。

※ビデオブログ=V-logのLogと意味が異なります。記録方式のLogです。

Log記録はHLGよりも白飛び黒つぶれ耐性の高い記録方式です。

しかしLogの場合は編集時調整前提なので白っぽい画作りで保存されます。

HLG(ハイブリッドログガンマ)の場合は名称通り " ハイブリッド ” で、

何もせずSDR、HDRの両方で自然な明るさや色味が再現出来る記録方式です。

2台は撮りっぱなし前提なので8bitではありますが、

加工耐性が強く白飛びも黒つぶれも置き難いHLGやLogを選びました。




順番等ばらばらとなりますが、それぞれいくつかを説明します。




【 色情報について(クロマサンプリング)】



またよく見かける4:2:0という数字についても少し説明しておきます。

これは色情報の間引きを表しています。

編集前提の映像を撮る場合かなり重要な項目です。

簡単に伝えると、この3つの数字は「平面の色情報量」と考えてください。
























この項目は”色がどう記録されているか”の説明的な数値です。

細かく途中まで書いていましたが、ここで全て書くのは不可能だと判断しました。

より詳しく専門的に知りたい方には検索等で調べて頂きたいと思います。


極々簡単に言えば4:4:4以外は色情報が間引かれています。


最初の数字が明暗情報、真ん中と最後の数字が色の情報です。

明暗情報は間引かれていないので画質は良く見えます。

人間の目は色の情報に疎い特性があるため、

輝度情報さえあれば色の変化は気づき難い為この手法は採用されています。


色の情報が少ない4:2:0では、4:4:4と比較すると輪郭や映像がぼやけて見えます。

しかし業務ビデオカメラでもスマホでも記録方式の主流は今もほぼ4:2:0です。

4:2:0でも実際は通常違和感や画質の劣化として感じることは少ないはずです。


またRGBではなくYCbCr(YUV)に変換していますが、

情報を根本から減らせる記録&伝送方式として以前から使われている手法です。

映像の伝送データ量を抑えられるので今もデジタル表示規格の多くで利用されます。

JPG等の静止画でもファイルサイズを抑える方法としても利用されています。





【 明暗情報の解像度 】


また編集耐性に関わる要素として重要な点が、

明暗差(色情報も関わります)の解像度「bit数」です。

今回はすべてのカメラとも8bitで撮影しております






















これは各数値の階調の段階数と考えてください。(難しい説明は省きます)

回時々出ている「ブロックノイズ」は4:2:0と8bit両方が大きな原因です。

なめらかなグラデーション表現や忠実性や耐性を上げるには通常最低でも、

4:2:2以上のクロマサンプリングと10bit以上での記録が必要になります。


ただし今回は催しの記録が目的の実撮影時間も5時間以上と長時間であることや、

コントラストの高い表現が多い撮影なので4:2:0の8bitで十分と考えました。

それでも、記録データだけでも1TBを超える素材データ量となっております。

※最終的にHDR 10bitで書き出したH.265ファイルをYouTubeで公開してます。


【 データレート 】



上記のクロマサンプリングとbit深度だけの説明では、

4:2:0ではすべて画質が同じで「画質悪いのでは?」と思うかもしれません。

それで今回はその分重要視した要素が記録データレートです。


これは記録する際にどれだけ時間軸を圧縮せずに記録するかという設定です。

さらに細かな技術的なお話は省略しますが、

機種によりこの数値を変更できない物や、記録可能な数値に違いがあります。

50Mbps / 100Mbps / 200Mbps / 400Mbps等を選び変更出来ます。

数値が多ければ高画質ですが、記録メディアの容量も速度も必要になります。

JPGの圧縮率と似ている部分です。(映像の場合時間圧縮が主になります)


動画の場合早い動きや明暗や色変化の情報量が増えると、

撮って出しであっても「ブロックノイズ」が出やすくなります。

例えば、

ニュース番組等でゆっくりした映像では綺麗な映像が、

サッカーなどスポーツ中継等の動きの速い映像の時だけ

映像が急に荒く四角い映像が見える時が結構あると思います。

これらをデータレートさえ増やせば防ぐことが出来るのです。

撮影時も同じく高レートで記録しておけば編集劣化を最大限減らせます。

今回は各カメラ基本的には最大のレートでの撮影としました。

GoProのみ最大値60MBpsですが定点固定である事と、

単焦点レンズ(ズーム機能のないレンズ)であること、

またGoProのみ5.3Kで録画しているため高画質で記録出来ました。

明暗差が激しかったり、

カメラが動く場合は情報量が増えるので画質劣化も増えます。

逆に固定でフルHD記録までのCanon ivis HF R21は古い家庭用機種なため

最大でも24Mbpsでしか記録できずデータ量起因のノイズが多いです。

他の機種は8bit記録での最大限のビットレートで100MBpsで記録しています。




【 音の解像度 】

 

サンプリング周波数は基本96kHzが最低限必最と私は考えています。

※ここは各個人や使う機種により認識に違いがある部分です。

しかし今回使用したH1nのマイク特性の限界や

バッテリー入れ替えできない関係で今回は48kHzで録音しました。

無加工の音声を聞いていただければわかる通り、

金物がうるさく感じたり空間感の再現性にも影響しております。

また振動対策でローカットフィルターを80Hzで設定しております。

そのため無加工の音をイヤホンやヘッドフォンで聞くと

低音がほとんど出ていない事が分かると思います。

周波数は機材と収録時間により妥協点としましたが、

音量解像度となるビット数は24bitで収録し編集耐性を確保しました。

また整音時には96kHzへ変換してから加工を行い補完しております。


音声も映像と似ておりまして、

最終公開データならCD音質44.1kHz/16bitでも十分な場合も多いです。

しかし加工前提のならば最低96kHz/24bit等の品質が必要と考えます。






★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 





と、長く様々な技術的な情報の前置きを書きましたが、

ここからが本題です!



まず公開版の色や音はすべて

実際私が現場で感じた光や音の場の雰囲気

それを

「最大限再現した映像」を目指しています。

今後を考えてHDRを基準にしております。




まず映像に関して。


説明通り事前にホワイトバランスは合わせておりましたが、

全カメラで白色が僅かにズレていたり色かぶりで違和感があります。

HLGとLog撮影機以外では白飛びと黒つぶれが多く、

各カメラとも色情報が飽和したり色味の足りなさが目立ちます。

各色の表現のズレがすべてのカメラで起こっております。

その点比較して確認頂ければ分かっていただけるかな?と思います。


今回のように各カメラのワイトバランスを合わせたとしても、

各カメラ全体の色のバランスが合うことはありません。

そして各カメラの色やレンズの特性、

そしてセンサーサイズによる暗所特性や色乗りが出てきます。

記録方式以前にアナログな性能がまず大きく影響します。

動かしているAX60の色乗りの悪さはセンサーサイズ起因と思われ、
本来の照明の美しさを全く記録表現出来ていないと感じます。
逆に、Canonのカメラは赤などの彩度を無理に乗せ過ぎています。
固定のGoProは綺麗ですが色バランスが他機種と離れすぎです。
上からのカメラは赤の色味がCanon並みにずれてピンク寄りです。
Logでとった私物カメラに関しては全体を調整する必要があります。
大雑把に書くと、
それら各カメラ全く違う個性を、
個別に色と明暗とそのバランスを整える処理をしました。


そして音に関して。


慎重に方向と位置を決めて録音しておりましたが、

H1nの音声はわずかに左に寄ってしまっていました。

無調整の映像の方をヘッドフォン等で聞いてい頂けば

その違いや左寄りのズレが確認いただけると思います。

これは本体がわずかに左に傾いていた為起きたと思われます。

また、

このレコーダーの音質特性は高音よりですが素直と感じますが、

録音した場所と収録形式、本体マイクの特性の影響もあり

金属音や高域にばかりにフォーカスした音質となっております。

音響編集者として聞くと、

ボーカルやギターの中域のおいしい音や低域の量が少ない点、

そして左右の音の広がりや音のノリも実際よりも薄れていて、

音全体の立体感が表現されていないことを感じられると思います。

またローカットフィルターの適用は適切でしたが、

録音した高さでは低音感がかなり足りない印象を受けました。


そして音量の部分でいえばマイク録音では当然なのですが、

打楽器の音が音量感を上げてしまい

全体の音楽の部分で音量感が出ていません。

(YouTubeはアップした時点で大音量は音量感が自動調整されます)

尚且つMCなどの音量が、

様々な再生環境を考えると少し小さすぎると感じました。


上記の問題と感じた点を、

音楽マスタリングと同じ考えで処理をし公開版で使用しています。

音量ピークを自然に抑え、

MC等の少し小さい音が聞き取れる程度大きな音量に整え、

それ以下のノイズ成分等多い小音量域は小さいままにしています。

また全体の音量感を、

自然で様々な再生環境でも聞き取れる音量感にしております。

また音質面に関しても上記で感じていた、

本来もっと魅力的に聞こえていたボーカルやギターの中域を

音質的にも音量的にも聞かせる音へと調整しました。

またあえて切った低音域を補正する程度に持ち上げています。

低音に関してはホールの中心付近だったため元々輪郭は出難く、

それを過剰にならない程度に戻そうとしたイメージです。

レコーダの高音域が痛い癖も飛び出る部分のみ少し削っています。

PCやスマホ等でも再生しやすい帯域バランスにしております。

また、左右感や全体的に必要な音の立体感を加味しております。

ライブ映像ですので映像はもちろんですが、
音に関しても出来るだけ多くの再生環境で楽しんで頂きたく、
最善のモニター環境で最短で明確な処理を施しております。


以上が今回行った主な処理です。

映像は色味と色合わせ重視で出来るだけノイズ抑えた調整をしました。

元映像の方がノイズ等を考えれば無理をしていない分綺麗ですし、


音に関しても何もしない方が出演者様によってはもしかすると

元の方が本来出したかった音と感じられるかもしれません。

また一部の再生環境によっては狙った音が出ていないかもしれません。

そこはマスタリングエンジニアとしての私の裁量と判断部分です。

各演奏者様達と会場の音響エンジニア様、

そして多くの視聴者にとって違和感を感じず良い音、

本来の音と感じられる音質を第三者目線で目指した音にしております。



また今回の記録方式では、

HLGやLogも含めてすべてのカメラが8bitであり、

結果的にすべて無理やり明暗を引き延ばした処理となっております。

そのため本来のデータレートの少なさ起因のブロックノイズとは別に、

明暗差や色味が微妙に揺らぐような箇所やデータノイズがある暗所で

元の情報量が足りずにブロックノイズが目立つ状態となっております。


今回ノイズを後処理で消すことも可能でしたが、

映像でも音響でもノイズがすべて悪い要素とは考えておりません

増感によるノイズも、デジタルの僅かなノイズに関してもです。


今回ノイズを消したバージョンもいくつか書き出しましたが、

ノイズにまぎれた部分のディティールが消えていしまうことや

雰囲気が消えてしまうと判断し、あえて採用しませんでした。

勿論消し加減にもよりますがノッペリとした映像になります。

ノイズが見えるからこそ空気感や暗さを感じ取れる部分もありますし、

デジタルであってもノイズが映像を引き立てる場面は多いと感じます。

そういった感覚的な判断の上で、

一部気になるブロックノイズはそのままで公開しております。



また色づくりで感じた点も書きたいと思います。


今回最も苦労した点は【基準の色味をどうするか】でした。

そして一番気にした部分は【肌色の自然さと綺麗さ】です。

バンド系のライブなので照明変化が激しい表現カ所も多く、

明暗差もコントラストも高めなために

様々な光に晒される「肌色」はとても難しい色味になります。

多くの出演者様達が様々な位置で別々の照明で写されるので

見える色も変化が大きいので最も判断に気を使いました。

わざと作ったり転ばす(色を黄色や赤色に寄せる)ことはせずに、

今回は出来るだけ優しい肌感になるように心がけ調整しました。


それに加えて、

HDRにしつつも派手さが出すぎないように彩度を抑えております。

元々フィルムっぽさを出したかったわけではありませんが、

最終的にHDRで見た際にデジタル臭さが消えるように、

各色味を最終的にさらに調整しハンドリングしております。

逆にSDR時の色味や暗部の表現やノイズは許容範囲と判断してます。


※ちなみにYouTubeの場合HDRで表示できる機種の場合、

 明暗のビット数は10bitとなりノイズも減りますし高画質で見れます。

 SDRでは8bitとなるためHDRで視聴する際よりもノイズも増えます。



★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 





■まとめ


撮影時の狙いや編集でもいろいろ思うところがあります。

編集後も4時間超と長い編集内容であるにも関わらず

短時間の編集でとどめているため、

もっと良くしたかった所、

違うカット割りにしたかった所、

全体的にピンク強いな?一部肌の赤み強すぎかな?

もう少し低音が上手く入る高さで録音すべきだったかな?

もう少し痛い音域抑えた方が良かったかな?等

気になる所は実際山ほどございます。


そんな感じでしてもっとやりたい所は多く残っておりますが、

すべての世の中の映像編集がそうであるように、

完璧な編集は誰が年単位で行っても多くは不可能です。

ということも踏まえ考えると、

全体的には1オペで限定的時間で行った撮影編集としては

自分の未熟さも加味すると”やれた方かな?”とは感じます。

撮影素材で1TBもあり、

書き出し直前の段階では2TB近くになる編集でした。

今までの編集の中でもかなり大容量な長辺編集となりました。



ここまで読んでいただけた方が

どれほどいらっしゃるか分かりませんが、

他のすべての撮影と編集でも常に戦いとなります。

特に、

音や映像の場合は実時間を必ず必要としますので、

集中し多くの時間と労力を注ぎ込まなければ完了しない作業です。

今回の編集期間も寝る前やお風呂に入っていても、

頭の中はそのことだけになって過ごす事となります。

映像編集とはそういったものです。


何も処理をしない場合もありますが、

それは撮影前の調整時に多くの時間をかけている場合のみで、

多くの場合はこういった作業工程を経て納品や公開となります。


逆に映像は撮影や編集は、

とても面白い分野でもあります。


それは近年言われる

”小学生の将来の夢1位がユーチューバー”である事とも関わります。


スマホやインタネット等の普及により、

映像表現がかなり身近なものとなっている事で

更にその魅力は増しているのが現状の時代感だと思います。

飽和状態と感じる事もありますが、

これからも映像と音は表現手段として残り続けるでしょう。

再生環境が技術に合わせ変わり続けるだけだと思います。


私の時代の映像とは、

まだまだ望んで学んだ極一部の人しか触れられず、

専用機材も今とは比べ物にならないほど高価で処理も遅く、

アナログとデジタルを無理やりつなげるような技術も年々変化し

特殊なごく一部の人しかできない分野のお仕事でした。


現在では誰もが撮影から編集まで手持ちの電話やパソコンで行え、

しかも無料ソフトでさえ自己表現や作品が作れてしまいます。

SNSでも写真や映像をアップすることが当然になっています。


そんな時代ではありますが、

それでもどれだけの時間や技術や確認手段を注げているかで、

最終的に見て頂いた時の印象は大きく変わります。

少しの違いで見る人たちに与える印象は全く違う物になります。

これは集客や人気や売り上げに直接関わる大きな違いを産みます。


機材だけ揃えればもちろん【似たこと】は出来ます。

しかし、

一般の方の撮影や録音とは明確な違いを感じて頂ける、

高品質と的確な表現が業務での映像編集では必要とされます。

結果はわずかな違いに見えても、とても重要な違いを調整しております。


個人ならばSNS等で内容の確認が出来れば十分かもしれませんが、

業務の場合はどこでだれが見ても最大限その場や対象の魅力を伝えられる、

最善の結果が再現されるよう撮影&編集を行っております。



今後も精進したいと思います。

また何か映像で残したいイベントや、

表現として私共の持つ技術やサポートが必要と感じていただけましたらば、

お気軽にご連絡いただきたいと思います。



各バンドさんの個性や音を聞きながら演出やパフォーマンスも見れて、

今回は個人的にもとても面白いイベントの撮影&編集作業でした。

出演頂いた皆様、誠に有難うございました!

また今後ともご利用よろしくお願い致します。

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